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Japanische Klassiker mit Furigana

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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme

Aozora Bunko

とき折 一人の子供の姿が見喪はれた 父や母の心のなかで     (後略)

土曜日の午後一時頃、軽井沢への直行が着く時分になると、信夫は革の鞄を提げて現われた。これから戸隠の山に行くとか、ちょっと千ガ滝まで行くのだとか、また一、二日軽井沢に遊びに来たとかいい、毎週の土曜ごとに例の快活そうに笑い、機嫌好く泊って行った。そして二、三日するとこれから帰京するのだと言い、出先から戻って来ると、また一泊した。この忙しい小旅行の中心地が軽井沢から、やや離れた千ガ滝附近にあるよりも、もっと遠い距離にあるらしく、しかも千ガ滝の旅館に直行することもあって、ちょっと判りかねる地理の不分明があった。或日信夫は茅野蕭々の別荘の位置と、草深い構えとを説明してああいう家に住みたいといい、芒とか萩とかが一杯別荘の周囲にあることを美しく話し出した。茅野蕭々は慶応の教授で詩人だったから、信夫も在学中からしたしんでいたのである。

信夫は私の家ではいつも離れに泊っていたが、或日何かの用事で離れに行くと鞄のわきに、一本の小型の扇が置いてあった。白檀の柄で透し模様が施された女持であった。軽井沢地方を旅行になれた人は、扇だけは持っていない、涼爽の地で扇をつかう暇がなかったからである。