Japanische Klassiker mit Furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme
千九百十年前後の私はその窓を見上げて、ふざけていやがるという高飛車な冷たい言葉さえ、持ち合わすことの出来ないほど貧窮であった。こういうアトリエに住んでみたい希みを持ったくらいだ。四畳半の下宿住いと、このアトリエの大きい図体の中におさまり返って、沢庵と米一升を買うことを詩にうたい込む大胆不敵さが、小面憎かった。
高村にはちっとも関係も意志もないことだが、私のほとんどの日が、このアトリエの前を通り、内部にあるかれの生活と私のそれとの比較が行われ、毎日遣っ付けられ毎日項垂れて通ったわけである。私はどのようにして自分のみじめさを救ったらいいかという考えの果に、やっと高村光太郎を正式に訪ねることで、かれの知己を得ることによって心の平明をとり入れたいと思った。いちどでも、このアトリエの中に客として坐りこめば、あんなに厭な気分でこの通りを歩かないで済むだろう。そして高村と友人関係になればかれに持つ嫉みも何もなくなるのであろうと思った。
私はある日二段ばかり登ったかれの玄関の扉の前に立ったが、右側に郵便局の窓口のような方一尺のコマドのあるのを知り、そこにある釦を押すと呼鈴が奥の方で鳴るしかけになっていた。