Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme

Aozora Bunko

つぎの夫人ができるまで彼女は生きているのだ。妻というものの恐ろしさはその生前もそうだが、死後のきよらかな妄執こそもっとも恐ろしいものだ。光太郎はうたっている。(画もかかず、本も読まず、仕事もせず、そして二日でも三日でも、笑ひ、戯れ、飛びはね、又抱き、さんざ時間をちぢめ、数日を一瞬に果す、ああ、けれども、それは遊びぢやない、暇つぶしぢやない、……後略)

光太郎はこの山小屋で毎夜智恵子への肉体幻想に、生きるヒミツをとどめていた頃、この山小屋にしげしげとわかい女からの手紙が、一週間に一度とか十日間に一度ずつ届いていた。ひとくちに言えばありふれた愛読者の手紙であった。しかしその手紙の冒頭にはいつも光太郎様とあるべきところに、今日はお父さん、ではまたお手紙をさしあげるまでお父さんは風邪をひかないでいてくださいと書き、ふしぎな言葉のあまさを含むお父さんという文字が続いて書かれていた。かれはこの異常な嘗てかれ自身が父にむかって呼んだ愛称が、この山小屋の中で日が晴れておれば、その晴れた日の中で呼びつづけられ、はしばみの裏の林に風がわたる夜中にも、雨戸のすきから柔しい父誦の愛呼がつづいた。