Japanische Klassiker mit Furigana
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あるさっかのやくび
或る作家の厄日
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る作家の厄日 (あるさっかのやくび) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.284 Zeichen · 21 Bildschirme
それの方が、作品もモダーンになる。つまり、彼女の無知が却って作品をよくするのだ。――この最後の点は、おれも黙っていたが、芸者をダンサーに変えることについて、懇々と注意を与えてやった。
さよ子はあちらの室で、熱心に原稿を書いている。それが進捗するに随って、おれの懐にはそれだけ原稿料がころがり込むというわけだ。
分らない箇所があると、彼女はおれのところへ相談に来る。おれは懇切に教えてやる。それから、尋ねてみる。
「どうだい、この作品、面白いかい。」
「たいへん面白いんですけれど……。」
「けれど……なんだい。」
彼女は額の汗をハンカチで拭いて、かしこまっている。
「遠慮なく言ってごらん。どこかに発表するというものじゃない。ただ、君の勉強のために清書さしてるんだ。いつも言う通り、物を書くということは、物をはっきり考えることだ。考えることと書くこととを、一緒のものにするのさ。そこで、この作品は、どうなんだい。」
「少し、やさしすぎるような気がしますけれど……。」
「けれど……それから。」
「わたくしにはたいへん勉強になります。」
相当にうまいことを言う。やさしすぎたり、彼女の勉強になったり、する筈だ。