Japanische Klassiker mit Furigana
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あるわかれ
或る別れ
北尾 亀男
Lesen Sie 或る別れ (あるわかれ) von 北尾 亀男 (きたおかめお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.515 Zeichen · 8 Bildschirme
上手から娘が洗濯物を入れたバケツ、盥などを提げて出て来て、窓の下の細引に通して干す。正面の路次から父が出て来る。ふと娘を見る。娘も父を見る。同時に、
父 おおお雪!
娘 ああお父さん、……まあ!
父 (嬉しそうに)矢張りお前だったんだな。
娘 まあお父さん。(涙が出る)よくねえ!
父 ここにいるのか。そうか、そりゃまあ何よりだ。達者で何よりだった。
娘 お父さんもよくねえ。今何処に?
父 麻布の方にいるよ。なにね、実はきのう越前堀まで用達に行ったら、途中であの山田の息子さんね、あの新太郎さん、あの人に逢って、この近所でお前によく似た人を見かけたと云うから若しやそうじゃないかと思って、出かけて来たのさ。
娘 あらそう、兄さんも矢張無事で……?
父 兄さんは矢っ張り……駄目らしいね。
娘 え、駄目? まだ分らないの?
父 うむ、まだ分らない!
娘 お父さん、その後、あっちへ行って? 月島へ?
父 うむ、兄さんかお前かに逢うかと思ってね、先のうちはよく行って見たけれど、近処で訊いても一向お前等を見かけた人もないので、この頃はもう……。
娘 私、お父さんは兄さんと一緒にいるとばかり思っていたのよ。