Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしゅき
或る女の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る女の手記 (あるおんなのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.447 Zeichen · 37 Bildschirme
ただいつとはなしに、白い平素着をつけた若いお坊さんの姿が、そのお寺の庭に、楓の並木の向うに、じっと立っているのを私は見出すようになった。けれども、若い淋しそうなお坊さんだと思ったきりで、別に気にも止めなかった。気にも止めないくらいに、知らず識らずのうちに見馴れてしまった。
私の見た限りでは、その年若いお坊さんは、いつも白い平素着で、楓の茂みの向うに佇んでいたり、また時には御門から真正面の大きな石碑の前を、ゆるやかに歩いてることもあった。その姿が、お寺の中の閑寂な庭に、一しお趣きを添えていた。私はお寺の前を通る毎に、必ず中をちらりと覗き込んで、其処にお坊さんの姿を見出されないと、或る淡い不満を覚えたものである。私の心はそのお坊さんに対して、何となく親しみを感じてきた。
或る麗わしい秋晴れの夕方であった。私はその日お当番で、いつもより遅く学校から帰ってきた。一片の雲もない大空は、高く蒼く澄み返って、街路には一面に黄色い陽が斜に流れていた。妙に空気がしみじみと冴えて、何処までもそのまま歩き続けたいような夕方だった。私は晴々とした心地で、お寺の前を通りかかった。