Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme
たことを話したが、その弁解には可なりゆきづまった。「兎に角僕は油断をしていた。性慾を軽蔑していた。人生を甘く見ていた。お前と一緒の生活をしているという腹が据っているので、何をしても危険はないと思っていた。そして遂に躓いたのだ。心は少しもぐらつきはしなかったが、肉体的につい躓いたのだ。」そんな風に私は云ったのである。勿論それも、私としては全然嘘ではなかったけれど、これ以外のことはどうしても云えなかった。云えば自分達の生活の否定になるのだったから。
それまで黙って聞いていた俊子は、そこで急に私の言葉を遮った。
「じゃあ何をしようと油断からならいいんですね。私もこれからせいぜい油断をしてみましょうよ。他の男と一緒に泊ってきて、つい油断をして躓いた、とそう云ってあげますわ。あなたがどんな顔をなさるか……。もう分っています、あなたの心なんかすっかり分っています。いつも私にはあんなに冷淡にしておいて、他の女に逢うと愛情が起るんでしょう! 性慾を軽蔑していたなんて、よくも図々しいことが云えたものですわ。」
「いや実際少しも光子に心を動かしたのじゃない。肉体的に躓くことはあったにしろ、僕は心の上では一度もお前に背いたことはないつもりだ。