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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

「そうです、」と彼は云った、「私はあなたをこのままでは済ませないと思っていましたが、もうそんなことはどうでもいいような気がしてきました。馬鹿げきったことです。」

私は俄にかっとなって、顔を真赤にした……と思うだけでなおかっとなって、大きな声を立てた。「帰り給え。もう出ていってくれたまえ。」

「ええ帰ります。」

彼は飛び上るように立ち上って、室から出て行った。その力強い足音が階段に消え去ると、私は急に気力がぬけはてたようになって、机の上にもたれかかった。そして暫く惘然としているうちに、全く無用な自分自身を見出した、と同時に、或る広々とした所へぬけ出した気がした。

それは一寸名状し難い気持だった。世界が俄に晴々としてきて、自分自身が遠くへ薄らいでいって、何もかもどうでもよくなった。松本がどうしようと、光子がどうしようと、俊子がどうしようと、私がどうしようと、生きようと死のうと、どうでもよくなった。死ぬことだって自由だ。そして私は死へ微笑みかけていった。

一時間ばかりして俊子と顔を合した時、彼女は私を睥み据えた。

「あの女の手紙を御覧になりましたか。」

「ああ見たよ。