Japanische Klassiker mit Furigana
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あるそびょう
或る素描
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る素描 (あるそびょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme
その帰りに、彼は友人にこんなことを云った。
「僕は暫くぶりで銭湯にはいってみたんだが……貧乏でも僕のうちには湯殿があるものだからね……、」そして彼は苦笑を洩した。「銭湯って変なところだね。ああ大勢客が込んでると、何というか……一種の群集心理みたいなものが働くと見えて、湯壺の中に一人か二人しか残らないで、みんな流し場に出てしまう時と、一度に湯壺へ飛び込んでくる時とがある。不思議だねえ。そして、大勢湯壺にはいり込んでくると、僕はそれを測ったんだが、湯の高さが、大丈夫一尺五寸は違ってくる。君、あの大きな湯壺の湯が、一尺五寸も高まるほど、人の身体がぶちこまれるんだぜ。女湯の方もそうだろう。両方で、男と女とが芋の子のように湯壺の中にこみ合って、ごった返してる。まるでめちゃだね。」
「え、めちゃだって……何が。」
「何がと云ったって……めちゃじゃないか。」
長谷部が果して何をめちゃだと感じたのか、友人には分らなかったが、その話を聞いた私にも、勿論分りはしなかった。
ところが、それと関係があるようなまたないような、変な告白を、私は長谷部からじかに聞かされたことがある。