Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるひ

或日

宮本 百合子

Lesen Sie 或日 (あるひ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.791 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

新奇なこともない新聞を読み乍ら食事を終った処へ或書店から人が見えた。

髪をちょっと丸めたままの姿で、客間に行って見ると髪を長くのばし、張った肩に銘仙の羽織を着た青年が後を見せて立って居る。

初対面の挨拶をし、自分は

「どうぞおかけ下さいまし」

と上座に当る椅子を進めた。

はあ、と云って立って居るのでもう一度同じ言葉を繰返すと、その青年は、ひどく心得た調子で

「まあどうぞ其方へおかけ下さい」

と、まるで自分が主人ででもあるような口調で私に、彼にすすめる椅子を進めた。

「荷物がありますから」

ちらりと小さい風呂敷包みを見、自分は何だか滑稽な、苦笑したい心持で席についた。

用向と云うのは、その書店で編輯して居る雑誌のことにつき、或話をききたいと云うのであった。用談がすむと、二三の人の噂をし、淡青い色の巻煙草の箱を出した。

家族に喫煙する者がないので、道具の出してないのに心付き、私は火鉢を彼の近くに押してやった。

彼は

「いや、どうも」

と云い乍ら、こごんで巻煙草に火をつけ、一ふきふかすと、直ぐ

「其じゃあ失礼致しましょうか」

と云い出した。

煙草を出すところから、火をつけ終るまで、悠くりした心持で見て居た自分は、突然そう云われた刹那、火をつけたばかりの煙草をどうするのだろう、と云う疑問を感じた。