Japanische Klassiker mit Furigana
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とびらのかなたへ
扉の彼方へ
岡本 かの子
Lesen Sie 扉の彼方へ (とびらのかなたへ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.155 Zeichen · 17 Bildschirme
私は何だか気が脱けてしまって、なんだと思っているところへ、ひょっこり帰って来た珪次の顔を見ると、生れつき何の屈托も取付けそうにない爽な青年なのを、私ゆえのために、こうもしょんぼりさせているのかと思うと、いじらしいような楽しみのような気持ちが起りまして、
「こらっ、いけずやさん、なぜ帰ったの」と笑いながら責めてやりました。すると珪次は案外に立ち勝った私の迎え方に有頂天になって、私の肩を抱えて、「御免、ね」と子供のように謝りました。私は何とも知れぬ涙がはらはらと零れて、花のようなこの青年を決して私のために散らすまい。もし、そういう羽目にもなれば、自分一人だけの所決にしようと決心しました。
その日は私の持ちものの最後を洗い浚い持たせてやって、金に代えさせ、珪次を存分に御馳走してやりました。
また二日ばかり経った珪次の留守の日のこと、私は小さい土鍋で、残った蒟蒻をくつくつ煮ていました。一寸書き添えたいのですが、私はどういうものか子供の時から、あの捉えどころのないような味と風体で人を焦らすような蒟蒻が大好物でした。私は鉛のような憂鬱に閉されて、湯玉で蒟蒻の切れの躍るのが、土鍋の中から嘲笑うように感じられるので、吹き上げるのも構わず、蓋でぐっと圧えていました。