Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とびら

扉

小川 未明

Lesen Sie 扉 (とびら) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.143 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

」

「厭です。私は、もう決してかからない。」

Bは拳を固めて突っ立った。体がわなわなと顫えている。しかし恐怖の影は面に漂っていた。彼は、Kを押し除けて出口の方に行こうとした。

「どこへ行く?」といって、KはBの片腕を捉えた。

「ハハハハハ、もうお前はかかっている!」

と、冷やかな声で耳許でいった。

「なに、かかるものか。」といってBはKの腕を振り離して扉に突き当った。

「駄目だよ。」と落着き払った声でKはいって女の腰でも抱える時のように柔しくBの腰に手を廻した。そしてすばやくBの瞼を撫でた。

「そらかかった! もうかかったよ!」

と、両手をBの体から離して冷やかに彼を見遣った。

Bの体はふらふらとして倒れかかる。

KはBの体を、白い床の上に徐に横たわらせた。赤いネクタイが、窓から洩るる鈍色の光線に黒ずんで見えた。背の高い黒い姿が夜の色より黒かった。窪んだ眼は奥底で輝いて口を開けて冷やかにハハハハハと笑って室を見廻した。

何の音もしない。ただ外では風が吹いていた。折々硝子戸に当る音がした。鼠色の服を着た、肥ったBの体は大理石を刻った像のように白い床の上に浮き出していた。