Japanische Klassiker mit Furigana
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だきみょうがのせつ
抱茗荷の説
山本 禾太郎
Lesen Sie 抱茗荷の説 (だきみょうがのせつ) von 山本 禾太郎 (やまもとのぎたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.330 Zeichen · 34 Bildschirme
それは、門のなかにはいって行く母の姿を見送ったとき、母がかぶっていたお高祖頭巾の背中に垂れたところに染め出されていた大きな紋であった。
母の死骸が浮いていた、と記憶する池の畔へも行ってみた。そこには、みごとに花をつけた椿の枝が水の上におおいかぶさり、落ちた椿の花がすこし赤茶気た、しかし琥珀をとかしたように澄んでいる浅い水底に沈んでいた。まだ水に浮いている花もあった。じつと水を見ているとお高祖頭巾をかぶったままの母の美しい死骸が、底にすきとおって見えるようだった。
こんな浅いところで死ねるだろうかしら、ふと君子は思った。たった一人の子である自分を門の外に待たしたまま母は自殺することができただろうか、お高祖頭巾の遍路が金のお札を飲まそうとしたのは父ではなく母であったはずだ。母は殺されたのではないか――母は殺されたのだ――そう思うと今まで夢のように思っていたいろいろの謎が少しずつ解けるように思われる。中風で口も、身体も自由が利かず寝たままの老女の頭髪は、よほど薄くはなっているが黒い毛の一本もまざらぬ白髪ではないか。下男の父は既に死んだということではあるが、それが十年前送ってきた老人に違いない。