Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆびとゆびわ
指と指環
佐左木 俊郎
Lesen Sie 指と指環 (ゆびとゆびわ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.538 Zeichen · 12 Bildschirme
蝋石のように白く、靭かに細長い婦人の指を、彼は興奮状態で視詰め続けた。話をどう切り出したらいいだろう? あの指に、この指環を嵌めてもらうのに、どう言って頼むべきだろう? そんなことを考えて胸を跳らせながら……。
「おいくらです?」
婦人の手はコオトの中に潜り込んだ。その手はすぐに、帯の間から蟇口を銜えて来た。そして婦人の指は白い鳥の嘴のように、蟇口の中から銀貨を啄んで女給の前に吐いた。――彼は、仏蘭西へ渡る際に見た彰子の手よりも、より美しく立派な指を初めて見るのだった。
婦人は、鼠色の手袋を袂の中に押し込んで立ち上がった。カッフェを出ようとするのだ。彼はそれを見るとあわて出した。彼は急にポケットに手を突っ込んだ。
「おい! 勘定だ。ここへ置くよ。」
彼はテーブルの上に一枚の紙幣を投げつけて、婦人の後に引き付けられるようにして出て行った。
婦人は銀座の舗石道に出た。青や赤や黄や薄紫の燈光がゆらめく中に、漫歩する人々の足音が賑かに乱れていた。婦人は最初、時々背後の方を振り返りながら、漫然とした静かな歩調を尾張町の方へと向けていた。
彼はその後から、婦人のほっそりとした後姿を見失わない程度に離れて、後から後からと流れて来る漫歩者の肩の間を游いだ。