Japanische Klassiker mit Furigana
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りゃくだつせられたるおとこ
掠奪せられたる男
豊島 与志雄
Lesen Sie 掠奪せられたる男 (りゃくだつせられたるおとこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.398 Zeichen · 48 Bildschirme
なあに今に立ち上って馳け出すんだい。」
山田と秀子とが其処に通りかかったのは、丁度小僧がそう云った時であった。その言葉を耳にすると秀子は眼で山田に相図をした。そして二人は黙って群衆に交って乞食の後からついて行った。
丁度其処は、並木の無い電車通りであった。乞食は歩道の縁を匐って行きながら、時々止った。もう可なり疲れているらしかった。雑巾みたいな汚いものを下腹のあたりから取り出して、額の汗を拭った。そして、やがて或る電柱の根本に辿りつくと、其処に臀を据えたまま動かなかった。群集は遠くから半円を作って彼を取り巻いた。彼は時々眼を挙げて人々を眺めたが、またすぐに頭を垂れてしまった。そして何やら考え込んでいるらしかった。否、何にも考え込まないでぽかんとしていると云った方が適当であった。
山田は秀子の方を顧みた。彼女は眼を光らして、じっと乞食の方を見つめていた。少し首を前に突出し加減にして、きっと唇を結んで眼を光らしている彼女の姿は、残酷なほど好奇心に満ちていた。そしてその好奇心の底から、一種の壮厳な権威が覗いていた。山田は彼女のそう云う姿を初めて見たのであった。