Japanische Klassiker mit Furigana
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りゃくだつせられたるおとこ
掠奪せられたる男
豊島 与志雄
Lesen Sie 掠奪せられたる男 (りゃくだつせられたるおとこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.398 Zeichen · 48 Bildschirme
その姿が向うの薄暗い角に消えると、一番に配達夫等が郵便局の中に其処から立ち去った。それから群集が種々な意味のことを囁きながら、或は「騙り奴」を罵り、或は「不幸者」を弁護して、消え失せてしまった。
秀子は、散ってゆく人々にじろじろ見られるのもかまわずに、其処に立っていた。そして誰も居なくなると、急に真面目な顔で山田の方を顧みた。「行ってみましょう、」と彼女は云った。
二人は、郵便局の石の壁に沿ってその狭い小路にはいった。物のむれたような臭い匂いがあった。郵便局の壁がつきると、汚いごたごたした広場に出た。共同水道栓がその真中にあって、土地がじめじめしていた。それから広場を横に曲って、低い長屋の間を通りぬけると、ふいと静かな裏通りに出た。二人は夢から覚めたようにほっと息をついた。乞食の姿は何処にも見えなかった。
「それごらんなさい!」と秀子は山田を顧みて云った。
山田は、心のうちの何からか急に呼び覚されたような打撃を感じた。秀子のうちには今の出来事を支配する或る不可思議な権威があるように、彼は感じた。その権威が、「それごらんなさい。」という二度の言葉のうちに、否そのうちの「それ」