Japanische Klassiker mit Furigana
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りゃくだつせられたるおとこ
掠奪せられたる男
豊島 与志雄
Lesen Sie 掠奪せられたる男 (りゃくだつせられたるおとこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.398 Zeichen · 48 Bildschirme
一杯張った水が、薄闇の中に、その底に黒ずんだ色を湛えて仄白く光った水面を見せていた。よく見ると、一枚散り落ちた木の葉がその水面に浮んで、軽い微風に揺めいていた。
「私大急ぎで拵えて貰ったのよ。」と秀子は口元に一寸見ると皮肉そうな云い知れぬ微笑を浮べて云った。「庭にはやはり池が一つないと淋しいわね。こうして拵えてみると、庭の眺めが自然に池の所に集って来て、云ってみれば池は庭の中心になるんだわね。それに、夏間は凉しくてほんとにいいわ。池が一つあるために庭中が凉しくなるような気がするのよ。私あれに暫くしたら、金魚を一杯放してやるつもり。どれ位入れられるものでしょう?」
山田はそれに何とも答えないで、じっと池を見つめていた。そして秀子の言葉が如何にも真実であるように響いた。特に、池は庭の眺めを集める中心だと云う言葉は、一言にして池の特質を云いつくしたもののように感ぜられた。然し……前から彼は其処に池を一つ欲していたではないか。実際口に出してまでそれを秀子に云ったことがある筈である。それとも云わなかったかも知れない。が兎に角、池は彼が欲していたよりも美事に出来上り、彼が思っていたよりもなお的確に其効果を秀子が説いている。