Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
Lesen Sie 播州平野 (ばんしゅうへいや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.683 Zeichen · 214 Bildschirme
不機嫌に時々よびかわし、雨傘をさしたひろ子とつれとを追い越した。徒歩連絡らしい列は、どこにも出来ていなかった。足のはやい、力のつよい男たちが、自分たちだけでぐんぐん先へ行った。ひろ子のつれとなった男は、緑内障で、ほとんど両眼の視力が失われているのであった。
それをきいてひろ子にはその快活そうでひどく気弱な男のとりなしの万端が諒解された。ひろ子は脚がよわい。その男には視力がない。その二人が、それぞれの目的で、須波と三原の間の、雨の夜道を歩こうとしているのであった。壮年にかかわらず視力の弱い男が、一種の勘で、丈夫でないひろ子を道づれとして見つけたことを、面白くも思えた。
月夜ならばそれが桜の樹だとわかりそうな並木のある堤のような道も、アスファルトで舗装されている広い大通りも通って行く道はみんな暗かった。ひどい降りになった雨と、びしゃびしゃ通る素性の知れない夜の歩行者とに向って、人家の雨戸は用心ぶかくとざされていた。すきま洩れる明りばかりが、時々繁い雨脚とぬれて光る道とを照した。
ひろ子は、一度ならずトラックがこしらえた深い穴ぼこの水たまりにはまった。