Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
Lesen Sie 播州平野 (ばんしゅうへいや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.683 Zeichen · 214 Bildschirme
東京に進駐してまだ三四日しかたっていなかったアメリカ兵が、あとからあとからと、その暗い洞のような、何を売っているのか分らない店の一方の入口から、入って来ては、もう一つの口から出て行った。
ひろ子が、一つのショウ・ケースのわきに立って眺めていると、二人づれの若いアメリカの将校が入って来た。みんなと同じに、簡単な好奇心だけであちこち見まわしているうちに、その一人が並べられている品ものを、段々仔細に注視しはじめた。何の部分品か分らない金具をとりあげてしばらく指の間でひねくりまわして調べてから頭をふって下へおいた。そこをはなれて、ひろ子が立っていた横を通りすぎながら、真摯なおどろきをあらわした低い声で、ひとこと、ひとこと明瞭につぶやいた。
「日本人は破産している」と。
偶然きいた外国人のその短い言葉は、ひろ子の耳の底へとおった。そして、心に止った。
一生懸命に体を平べったくし、翼をぱたぱたやってその水たまりで行水を使おうと骨折っている一羽の雀のもがきのようなものが、ここの家へついてからのひろ子の感情に生じた。直次という生活の中心を喪った不幸は、ここの家の女ばかりの暮しから、その悲しみをたっぷり溢れさす気の張りをさえ失わせてしまっている。