Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎたい
擬体
豊島 与志雄
Lesen Sie 擬体 (ぎたい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.945 Zeichen · 25 Bildschirme
暫くして、丸田がやって来、青木を見ると、びっくりしたように佇んだが、石村へ封筒を差出し、青木へは会釈しただけで出て行った。
石村は青木の前へ戻って来た。
「では、これは今月分の手当。これは退職金。退職金の方は小切手になってるが、いいだろうね。調べてみてくれ。」
青木は金を調べ、前に置かれてる受領書へ捺印した。
石村は仕事机から戻ってきてから、まだ突っ立ったままだった。青木は金を納めてから立ち上った。
「長々お世話になりました。」
「いや、御苦労さまだった。」
石村が手を差出したので、青木はその手を握った。その時の石村の凝視の眼光と頑丈な硬い掌とに、青木はぞっと身が凍る思いをした。その感じが、あの喜劇のさなかを妻の登志子に覗かれた瞬間の感じと、ふしぎに相似たものがあって、青木は更にぞっとした。
青木は反抗的に言葉を探して、ばかなことを口走ってしまった。
「私は今西巻子を少しも愛してはいません。然し、あの女は、あなたと気が合いそうです。ほかのことに使ってごらんなすったら、屹度役に立つだろうと、私は思います。」
余計なことを言って、失策ったと思い、青木は唇をかんだ。