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Japanische Klassiker mit Furigana

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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

Lesen Sie 支倉事件 (はせくらじけん) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 204.697 Zeichen · 406 Bildschirme

Aozora Bunko

持って行く場所はどことも指定してなかった。

「場所が書いてないね」

渡辺刑事は射るような眼で浅田を見ながら云った。

「書いてありません」

浅田は手紙を渡辺の前に差出しながら答えた。

「どこか打合してあるんだろう」

「いゝえそんな事はありません」

浅田は首を振った。

「じゃ、どこへ持って行くのか分らないじゃないか。君、今更嘘を云ったって仕方がないじゃないか、ほんとうの事を云って呉れ給え」

「全く打合せなんかしてはありません」

「ではどうして届けるのだい」

「その都度打合せをしているのです」

「打合せると云うと、支倉のいる所が分ってる訳だね」

「いゝえ、そうじゃないのです」

浅田はあわてゝ云った。

「じゃ、どうして打合すのだね」

「この手紙に消印のしてある郵便局へ留置きでこっちから手紙をやるのです」

「えっ」

渡辺刑事は彼等の奸智に長けた事と用心深い事にすっかり感心して終った。浅田は捨鉢になったように黙りこんだ。

「ふん」

渡辺刑事はじっと腕を組んで考えた。支倉が、留置郵便を受取りに来る所を押えようか、いやいや、何事にも用心深い彼が果して自身で受取りに来るかどうか疑問である。それに郵便局のある所は可成繁華な所で、大路小路が入り乱れているから、万一押え損ねると中々面倒になる。