Japanische Klassiker mit Furigana
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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
Lesen Sie 支倉事件 (はせくらじけん) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 204.697 Zeichen · 406 Bildschirme
二度までも切なる嘆願書を受取って裁判長も弱った。支倉が何事を訴えようとしていたか、それは想像に難くない所で、裁判長にも予め察しはついていた。それに支倉は公式の法廷では狂態を尽して審問に答えていないのだから、私かに、裁判長に訴えたいと云うのは筋違いである。裁判長は然し流石に人間である。彼の哀れな心を押し計って面晤を許したが、もとより彼の望みは叶えるべくもなかった。
かくて彼支倉は公判のある度に法廷に怒号咆哮し、恨み重なる人々へ、草を分け根を掘って、それからそれへと脅迫の手紙を送りながら、未曾有の東都大震災にも幸か不幸か身を完うし、大正十二年も秋とはなったが、彼は再び根気よくも保釈願を出した。自ら名乗る冤枉者喜平、只一度浮世の空気に触れて見たいと云う、悲惨な突きつめた彼の願も、彼自身の行状と、冷い法規の定むる所に従って、遂に許さるべくもなかったのだ。元より書類を隠した云々の事は根もない事だが、繰返し訴える彼の執拗さと根気は驚く外はない。
「閣下に之迄再三お目にかゝれましたが、其際に閣下は何時でも、『お前の記録としてのものは未だ少しも見ていない。又上願書としてのものも少しも読んでいない。