Japanische Klassiker mit Furigana
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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
Lesen Sie 支倉事件 (はせくらじけん) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 204.697 Zeichen · 406 Bildschirme
石子刑事は囁いた。
「之がもう少し大事件だと張合があるが、窃盗位じゃ詰まらないねえ」
「うん」
眼を瞑ってウト/\していた渡辺刑事は、突然に話しかけられたので好い加減な生返辞をした。
石子刑事は鳥渡不機嫌になった。彼は詰らない窃盗事件だと云ったけれども、内心では得意だったのである。官服の巡査から私服の刑事に出世してから一年間、若い彼の心は野心に燃えていたけれども生憎事件らしいものに突き当らず、いつも他の刑事の後塵を拝しているような始末なので、稍焦り気味だったのが、今度始めて彼の手で嗅ぎ出した、どうやらものになる事件だったので、彼は充分意気込んでいるのだった。
渡辺刑事は、口を結んで黙っている下顋の張った同僚の横顔をチラリと見て軽く舌打をしたが、然し対手の気を引き立てるように言った。
「そうでもないよ、君。たゞの窃盗とは違うさ。牧師の身でありながら聖書を盗むのだからね。而も君の話だと白昼堂々と盗み出すと云うじゃないか」
「そりゃそうなんだがね」
石子刑事は少し機嫌を直した。
石子刑事が、岸本清一郎と云う聖書販売人をしている青年の訪問を受けたのは三、四日前の夜だった。