Japanische Klassiker mit Furigana
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しなまいのふくろ
支那米の袋
夢野 久作
Lesen Sie 支那米の袋 (しなまいのふくろ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.357 Zeichen · 50 Bildschirme
どうしてもその時の恐ろしさが忘れられなくって「ハイ」とか「イイエ」とかいう短かい返事をするのさえ怖くて怖くてたまらない気がしてね。それを無理に口を利こうとすると、歯の根がガタガタ云い出して、すぐに吐きそうになって来るんですもの……仕方がないから丸で唖者みたようになって、眼ばかりパチパチさせていたら、警察の人達もとうとう諦らめてしまって、来なくなったようよ。
……だけども、そうして妾が一人ボッチになってから、ウトウトしようとすると、すぐに、あの時の気持が夢になって見えて来て、寝床の中で汗ビッショリになりながら、一生懸命に藻掻かせられるの。夢うつつに敷布を噛み破ったり湯タンポを蹴り落したりしてね。その恐ろしさったらなかったわよ。そうして、そんな夢のおしまいがけにはキットあのヤングの悲しい、静かな声が、どこからともなくハッキリと聞えて来て、妾をサメザメと泣き出させたの。眼が醒めてから後までも、妾は、そんな言葉の意味を繰り返し繰り返し考えながら眼をまん丸く見開いて、いつまでも暗い天井を見詰めていたわよ。
そのうちに十日ばかりも経つと、凍傷の方が思ったよりも軽く済んだし、針金の痕も切れ切れになってお化粧で隠れる位に薄れて来たの。