Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうのやど
放浪の宿
里村 欣三
Lesen Sie 放浪の宿 (ほうろうのやど) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.066 Zeichen · 28 Bildschirme
そうだ。若者が流れ込んだ時に、この虱を潰していた男は時計屋だった。
この男は時計の修繕を拾いながら、それで世界を流して歩こうと云う、また滅相もない野望をもっているのだ。この時計屋の話によれば、可愛いい女房が、のびたうどんみたいになって、あの世へくたばった日から、店を畳んでしまって、その途徹もない野心を、学生鞄のなかにネジ廻しや、人形の靴みたいな金鎚と一緒くたに納い込んで、もう五年この方流浪しているのだと云う――。この男のその気持はまるで解らない。支那服は雑作もなく(なあに、女房の死霊に、魂をあの世へかッさらわれたのさ。それでフヌけた訳さ)と、簡単に片付けたが、或いはそうかも知れない。
若者が荷厄介な古行李同然の調子で、自分の体をやけ糞に投げ出すと、びょこッと時計屋が折れ釘のように、起きあがって手を伸ばした。
「若いの! 三銭ばかりないか。腹が減ってしようがないんだ」抜毛のように頼りない声を出した。
「三銭どころか。この通りさ」若者は両手をはたいて見せた。
「そうか」
折れ釘はまたそのまま倒れた。
そしてそれっきりで二人がうとうととしかかった時、絞め損った鶏を飛ばしたような消魂しさで、引き裂かれるような悲鳴が、耳のつけ根で爆発した。