Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうのやど
放浪の宿
里村 欣三
Lesen Sie 放浪の宿 (ほうろうのやど) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.066 Zeichen · 28 Bildschirme
黒眼鏡が興味深く訊き返えした。
「社会主義者だって、何れ大したもんじゃああんめえよ!」
支那服も黒眼鏡も、それっきりその話をやめてしまった。そして喰うだけ喰うと、二人は連れだって、暮れかかった街に出て行った。
「まるでこっちとらとは、泥亀とすっぽんほどの違いだ。豪気なもんだ」
左官は、暗くなった部屋のなかで、ビーフの食い残しをつまみあげながら呟いた。
彼等と擦れ違いに、時計屋が洞穴のように糜れた眼玉を窪ませて帰って来た。
「骨ぐるみかッさらって行かれそうに、********!」
左官は黒眼鏡の言葉を思い出して、こみあげてくる笑いを殺すことが出来なかった。
二人は彼等の喰い残しのロースビーフに噛りついたのが、御馳走の最後だった。
それっきり支那服も、黒眼鏡も帰って来なかった。無論のこと大連も、それっきりだった。――
時計屋と左官の上には、がらりと生活が向きをかえた。二人の上には再び、あのにぎやかな生活が帰らないのだ。零落と流浪の絶望が眼に見えない手を拡げ始めた。
左官には、大連の情熱に満ちた夢がなかった。
時計屋には支那服の、あの度胸がなかった。
坊主が怖気づいていた、黒眼鏡と支那服がいなくなったので、乾干になりかかった時計屋と左官を取っ掴まえて、日毎に怒鳴り込んで来た。