Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうのやど
放浪の宿
里村 欣三
Lesen Sie 放浪の宿 (ほうろうのやど) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.066 Zeichen · 28 Bildschirme
若者はそこまでよろめいて行った時、ちょっと立ち停った。路を考えるようにも見えたし、また空いたベンチを捜し求めるようにも受取れた。だが、その何れでもなかった。彼の眼は、無料宿泊所の新らしい木札に、磯巾着のように吸いつけられたのだ! かすかではあるが、疲れ切った若者の顔には生色が動いた――その若者は木札の意味を読みとると、すぐに病院の柵に沿うて右側の路に折れて行った。
病院の柵が尽きると、埃の多い十字路になって、その向い側の一角はアカシヤの深い木立に蔽われて、支那風の土塀にかこまれた正念寺だった。正面に黒い門が開いていた。門柱の一方には『無料宿泊所』の看板があって『お宿のない人、職のない人は遠慮なくお越し下さい』と、親切な添え書きさえしてあった。
この寺院と斜かいになった十字路の角は、ロシヤ人の酒場だった。酒場と云ってもそれは、馬糞よりも下等な馭者や、もっとそれよりもひどい下層労働者達が、未製のカルバスや生胡瓜を噛って、安酒を呷ったり、牛の臓腑を煮出したスープを啜って飲み食いする劣等な飲食店であった。その店頭には蒲団の破目からはみ出たボロ綿みたいな髪の毛の小娘が、雑巾よりもひどいスカートから泥だらけの素足を投げ出して、馬鈴薯の皮を剥きながら、そのまま笊におッかぶさって居睡っていた。