Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうのやど

放浪の宿

里村 欣三

Lesen Sie 放浪の宿 (ほうろうのやど) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.066 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

無精髭の伸びた坊主が、迂散臭い眼付きで、若者の頭のさきから靴のさきまで眺め上げ、眺めおろした。

「何処から来た?」

坊主は木を折るように怒鳴った。

「は、奉天から」

「歩いてか?」

「え……」

「そこに帳面と硯があるので、原籍と姓名を書きとめておいて、向うの長屋で休むといい」

坊主は面倒臭く言葉半分に言い捨てて、とっとと奥へ戻ってしまった。

『お腹が減っているんですが、一口……』と思ったが、もう追いつかなかった。若者はぼんやり気の弛むのを感じた。

宿泊所と云っても、それは名ばかりのもので、貸家づくりの八畳一間きりの長屋だった。何んの目的のために、こんな貸家を宿泊所に潰したのであるか、その坊主の魂胆は言わずと知れている! 窓ガラスは破れ放題だし、畳はぼこぼこにほぐれていた。ペンキの剥げ落ちたドアに通じる路だけが、どうにか路らしく踏みにじられてある以外は、雑草が跳梁するままだった。恰もそれは雑草に埋れた破家の感じで、得体の知れない蔓草に窓も壁も蔽われて、更にこの宿泊所の陰鬱な零落者の蔭を濃くするために、葉の繁ったアカシヤの木立が深々と枝を垂れていた。

若者は把手の壊れたドアを開けて、薄苔の生えた土間に入って行った。