Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうのやど
放浪の宿
里村 欣三
Lesen Sie 放浪の宿 (ほうろうのやど) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.066 Zeichen · 28 Bildschirme
もうこの時、鮮かな支那服の短刀で動脈を切り開かれた濡板の犬は、まるで洗濯物のように胴なかを揉みしぼられていた。赤い生血が、小気味よく切口から溢れ奔って、それが濡板を染めて、五寸四方位の大きさに掘り抜かれた穴に流れ込んでいた。馴れ切ったものだ!
「どうだ。小気味よく流れ出すじゃねえか。赤い生血は気味のいいもんだな」
支那服が、うっとりした眼で、血のついた手を毛だらけにしながら、犬の胴を揉み抜いた。
「うむ。生血だぞ。その度胸で呑み干しちゃあ!」
血がすっかり絞り取られると、犬はぐったりと濡板の上に伸びて、毛並すらも青ばんでゆくように感ぜられた。白い眼をむいて、黒ずんだ昆布の裳を思わすようなギサついた口唇の横から、撲殺される刹那に、自分の歯で食いちぎったらしい血まみれの舌を、だらりと意気地なく吐き出していた。
水で手と短刀を洗い清めると、垂れさがって来る袖をまくり上げて、支那服が短刀の鋭い刃さきをずぶりと犬の顎に差し込むと、その握った柄を力一杯に、しかも見事な手つきで尻のあたりまで切りさげておいて、その刃を逆に巧妙に使い分けて皮膚と肉のなかに差しいれて、見る見るうちに、一匹の野犬を血だらけの肉と皺くちゃな一枚の毛皮に引き剥がしてしまった。