Japanische Klassiker mit Furigana
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となんせんせい
斗南先生
Lesen Sie 斗南先生 (となんせんせい) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.262 Zeichen · 44 Bildschirme
「夏蜜柑の択び方も知らん」と言ってまじめになって小言をいいながら、それでも伯父はムシャムシャ喰べた。そして三造にも勧めた。砂糖がなくてはと酸いものの嫌いな三造が言うと「そんな贅沢なことでどうする。今の若いものは」と再び小言が始まった。ふだんは、こんな事を言い出してはますます若い者に嗤われることを知って、自ら抑えるようにしているのだが、病気のためにそんな顧慮も忘れてしまったらしい。三造も腹が立ち、ハッキリと苦い顔を見せて、いつまでも夏蜜柑の黄色く白っぽい房を、喰べずに掌に載せたまま、強情に押黙っていた。
しかし、いよいよ切符を切り構内に入って露天のプラットフォオムのベンチに、トランクにもたれ、毛布をしいて、ほっと腰を下した伯父を見た時、――沈んで間もない初夏の空は妙に白々とした明るさであった、――三造は、はっきりと、伯父の死の近づいたことを感じさせられた。円い形の良い頭蓋骨が黄色い薄い皮膚の下にはっきり想像され、凹んだ眼は静かに閉じ、顴骨から下がぐっと落ちこんで、先端の黄色くなった白髯が大分伸びている。そして右手はキチンと袴の膝の上に、左手は胸からふところへ差し込んだまま、眠ったように腰掛けている伯父の姿のどこかに、静かな暗い気がまといついているような気がするのであった。