Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
となんせんせい
斗南先生
Lesen Sie 斗南先生 (となんせんせい) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.262 Zeichen · 44 Bildschirme
伯父の苦しそうな寐顔を見ながら、しかし、彼は、かえって、この伯父のかつての滑稽な非常識な失策などを思い出していた。伯父が銭湯へ行ったところ、女湯とあるのを読み、そこには男湯はないものと思って、帰って来た話。また、三造の妹に、駄菓子屋へ行って、キャラメルを五円買って与えた話。そんなことを彼はゴトゴト揺られながら思い出していた。その三造の妹は二年前に四歳で死んだ。それを大変悲しんだ伯父はその時こんな詩を作った。
毎我出門挽吾衣 翁々此去復何時
今日睦児出門去 千年万年終不帰
睦子とはその妹の名である。三造には漢詩の巧拙は分らなかった。従って伯父の詩で記憶しているのもほとんどないのであるが、今、次のようなのがあったのを、ひょっと思い出した。その冗談めいた自嘲の調子が彼の注意を惹いたものであろうか。
悪詩悪筆 自欺欺人 億千万劫 不免蛇身
口の中で、しばらくこれを繰返しながら、三造は自然に不快な寒けを感じてきた。何故か知らぬが、詩の全体の意味からはまるで遊離した「不免蛇身」という言葉だけが、三造を妙におびやかしたのである。彼自身も、この伯父のように、一生何ら為すなく、自嘲の中に終らねばならぬかも知れぬというような予感からではなかった。