Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だんがいのさっかく

断崖の錯覚

黒木 舜平

Lesen Sie 断崖の錯覚 (だんがいのさっかく) von 黒木 舜平 (くろきしゅんぺい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.483 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

六

訪問を行った。

六

私が「いでゆ」のドアをあけたとたんに、わっと笑い崩れる少女たちの声が聞えた。私はどぎまぎして了った。ひらっと私の前に現れたのが、昨日の断髪の少女であった。少女は眼をくるっと丸くして言った。

「いらっしゃいまし。」

少女の瞳のなかに、なんの侮蔑も感じられなかった。それが私を落ちつかせた。それでは、昨日の私の狂態も、まんざら大失敗ではなかったのか。いや、失敗どころか、かえってこの少女たちに、なにか勇敢な男としての印象を与えたのかも知れない。そう自惚れて私は、ほっと溜息ついて、傍の椅子に腰をおろした。

「きょうは、私、サアヴィスしないことよ。」

日本髪の少女は、そう言っていやらしく笑いこけた。

「いいわよ。」断髪の少女が長い袖で日本髪の少女をぶつ真似をした。「私がするわよ。ねえ、私、だめ?」

「ふたり一緒がいい。」

私は、酒も飲まぬうちに酔っぱらっていた。

「あら! 欲ばりねえ。」

断髪が私をにらんだ。

「いや、慈悲ぶかいんだ。」

「うまいわねえ。」

日本髪が感心した。

私は面目をほどこして、それからウイスキイを命じた。

私は、私に酒飲みの素質があることを知った。