Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
と云い放ち、鵯のごとく、庭木のあいだへ駈け去った。逃げたのである。利家は大きく舌打ちした。そしてもう一度秀吉へ詫びを云った。
「自分の兄の子ですが、あのとおりちと馬鹿なのでござる」
そのくせ利家には、歎いているふうはなかった。むしろ、この一奇児を、ひそかに珍重している容子さえどこかにある。
「いや、暇どった。又左、来春陽気が好うなったなら、また上洛られい。悠りとな」
「ぜひ、参ることになりましょうな」
利家は、門まで秀吉を送り出しながら、なお一語、云い足した。
「――越路の雪の解け次第に」
「さらば。雪でも解けたら」
秀吉は振返って、後から来る顔のそばでニコと笑った。利家も微笑した。
前田利家、不破彦三、金森五郎八の三使は、同月十日北ノ庄に帰り、直ちに、仔細を柴田勝家に復命した。勝家は、偽和の計が、予想以上、うまく運んだものとして、
「寒天の節、遠路辛苦の使い、何とも大儀であったよ。満足満足」
とよろこぶことかぎりなく、やがて利家が越府を辞して、能登の居城へ帰った後、極く腹心の輩に、密かにこう囁いていた。
「先々、冬中は筑前を騙りおいて、明春、雪解けの頃を待ち、一挙に宿敵を屠り去ろうぞ。