Japanische Klassiker mit Furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme
「……しかし、拙者は」
「文句はいらない、やるのかやらんのか、はっきりしろ新島」
「……どこでやるんです」
「先へゆきたまえ、その松林の中へはいるんだ、右だ」
常陸の府中の宿で、大助と応対したときの傲岸なようすは、今の新島八十吉には微塵もなかった。呼びかけられて抜き合せるかたちだけはみせたが、心はまるで闘志を失っている。水戸のときで腕の違いを知っているためだろうか、しかしそれで自信がないのなら、こんどまた一人でつけて来るという筈はない、ではこっちにゆだんをさせようというつもりだろうか……うしろから挙動の端々をじっとみまもりながら、秀之進はふしぎな八十吉の態度の解釈にくるしんだ。
松林をぬけて、小高い丘を越すと、その向うにかなり広い草原がひらけていた。午前の強い日光を浴びて、夏草がかっと眩しいほどに輝いている。秀之進はそのなかへはいっていって足を停めた。
「此処がいいだろう、しかし、君は本当はやりたくないんじゃないか、これはおれが挑んでいるんじゃない、こんな事はおれにはなんの興味もないんだ、それはわかっているだろう」
「……そうです、仰しゃるとおりです」八十吉は唇を震わせながら眼をあげた、「拙者にはあなたを斬ることはできない、口惜しいけれど本当です、水戸のときはそうでもなかったんですが、今では……」