Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
裾にさしあって寝ている母が父に何時もこうつぶやいていた。外はながい雨である。
「一軒、家ちゅうもんを、定めんとあんた、こぎゃん時に困るけんな。」
「ほんにヤカマシかな。」
父が小声で呶鳴ると、あとは又雨の音だった。――そのころ、指の無い淫売婦だけは、いつも元気で酒を呑んでいた。
「戦争でも始まるとよかな。」
この淫売婦の持論はいつも戦争の話だった。この世の中が、ひっくりかえるようになるといいと云った。炭坑にうんと金が流れて来るといいと云っていた。「あんたは、ほんまによか生れつきな」母にこう云われると、指の無い淫売婦は、
「小母っさんまで、そぎゃん思うとんなはると……」彼女は窓から何か投げては淋しそうに笑っていた。二十五だと云っていたが、労働者上りらしいプチプチした若さを持っていた。
十一月の声のかかる時であった。
黒崎からの帰り道、父と母と私は、大声で話しながら、軽い荷車を引いて、暗い遠賀川の堤防を歩いていた。
「お母さんも、お前も車へ乗れや、まだまだ遠いけに、歩くのはしんどいぞ……」
母と私は、荷車の上に乗っかると、父は元気のいい声で唄いながら私達を引いて歩いた。