Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
頭のなかにたまっている、何もかも、きっちり挾んで逃げないようにしておきたい。
オカアサマ、私生児はへこたれませんよ。もうめんどうなことは考えないでいましょう。どんなに家柄がいいと云ったところで落ちぶれてどろどろになる貴族もいます。貴族とは紋のような紋。あおいの紋は立派だそうだけれど、私はやっぱり菊や桐の紋が好きです。
私は折れた鉛筆のようにごろりと眠る。
世の中はいろんなもので賑やかだ。
十二社の鉛筆工場の水車の音が、ごっとんごっとん耳に響く。爽やかな風が吹いているのに私は畳に寝ころんでいる。只、呆んやりと哀しくなるばかり。本当はちっとも死にたくはないのに、私はあのひとに、死ぬかもしれないと云う手紙を書きたくなった。
少しも死にたくはないのに、死にたいと思うこともある。空想が象のようにふくらんで来る。象が水ぶくれになってよたよたと這いまわって来る。
何処かで鮭を焼く匂いがしている。
あのひとが走って来てくれるような、長い手紙を書きたかったけれど、紙もインクもない。新宿の甲州屋の陳列のなかの万年筆が、電信柱のようににゅっと眼に浮ぶ。二円五十銭だったかな。