Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
今日も働けり。
啄木はこんなに楽しそうに家にかえる事を歌っているけれど、私は工場から帰ると棒のようにつっぱった足を二畳いっぱいに延ばして、大きなアクビをしているのだ。それがたった一つの楽しさなのだ。二寸ばかりのキュウピーを一つごまかして来て、茶碗の棚の上にのせて見る。私の描いた眼、私の描いた羽根、私が生んだキュウピーさん、冷飯に味噌汁をザクザクかけてかき込む淋しい夜食です。――松田さんが、妙に大きいセキをしながら窓の下を通ったとおもうと、台所からはいって来て声をかける。
「もう御飯ですか、少し待っていらっしゃい、いま肉を買って来たんですよ。」
松田さんも私と同じ自炊生活である。仲々しまった人らしい。石油コンロで、ジ……と肉を煮る匂いが、切なく口を濡らす。「済みませんが、この葱切ってくれませんか。」昨夜、無断で人の部屋の机の引き出しを開けて、金包みを入れておいたくせに、そうして、たった十円ばかりの金を貸して、もう馴々しく、人に葱を刻ませようとしている。こんな人間に図々しくされると一番たまらない……。遠くで餅をつく勇ましい音が聞えている。私は沈黙ってポリポリ大根の塩漬を噛んでいたけれど、台所の方でも侘しそうに、コツコツ葱を刻み出しているようだった。