Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
夜、メダカ女史が泣いていた。どのような原因なのかは知らないけれども、取りみだして泣いている。白いカバーのかかった座蒲団の重ねてある暗いところで泣いている。書斎は森閑としている。
台所で一人で食事。来る日も来る日も、なまぬるい味噌汁と御飯。ぬか漬の胡瓜を一本出してそっと食べる。ああ、たまにはジャムつきのパンが食べたい。
奥さんが、小さい声で叱っている声がする。恩を仇で返されたようなものよと云う声がする。学者の家と云えどもいろいろな事あり。――メダカ女史の見栄坊がねこそぎ失脚してしまった。その後は声をたてて泣く。女の泣き声が美しいのに心が波立つ。やぶれかぶれで、またぬか漬けの茄子を出して食べる。
酢っぱい汁が舌にあふれる。
凪に近い暑さ。風鈴が時々ものうく鳴る。明日はこの家を出たいものだ。何しろ、蚊が多いのはやりきれない。台所をかたづけて、水道で躯を拭いていると、ひどい藪蚊にさされる。皮膚が弱いのですぐぷっとふくれる。浴衣を水洗いして夜干しをして置く。いい月夜なり、写真のような白と黒の影で、狭い庭のそこここに白い人が立っているような錯覚がする。
(七月×日)