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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme

Aozora Bunko

別に遅かったねと云うわけでもない。自分の事ばかり考えている人なり。鼻を鳴らしながらおからを煎っている。鍋を覗くと、黒くいりついている。何をさせても下手な人なり。葱も飴色になっている。強烈な母の我執が哀れになる。部屋の隅にごろりと横になる。谷底に沈んで行きそうな空虚な思いのみ。卑屈になって、何の生甲斐もない自分の身の置き場が、妙にふわふわとして浮きあがってゆく。胴体を荒繩でくくりあげて、空高く起重機で吊りさがりたいような疲れを感じる。お父さんとは別れようかのと母がぽつんと云う。私は黙っている。母は小さい声でこんななりゆきじゃからのうとつぶやくように云う。私は、男なぞどうでもいいのだ。もっとすっきりした運命と云うものはないのかと思う。義父の仕入れた輪島塗りの膳が、もういくらも残ってはいない。これがなくなれば、また、別のネタを仕入れるのだろう。

次から次から商売を替えて、一つの商売に根気のないと云う事が、義父と母を焦々させているのであろう。十二円の家賃が始めから払えもしないで、毎日鼻つきあわせてごたごたしている。第一、まともに家なぞ借りたがるよりも、田舎へ帰って、木賃宿で自炊生活をして、二人で気楽に暮した方がよさそうに思える。