Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
窓外の名も知らぬ大樹のたわわに咲きこぼれた白い花には、小さい白い蝶々が群れていて、いい匂いがこぼれて来る。夕方、お月様で光っている縁側に出て男の芝居のせりふを聞いていると、少女の日の思い出が、ふっと花の匂いのように横切ってきて、私も大きな声でどっかにいい男はないでしょうかとお月様に呶鳴りたくなってきた。このひとの当り芸は、かつて芸術座の須磨子のやったと云う「剃刀」と云う芝居だった。私は少女の頃、九州の芝居小屋で、このひとの「剃刀」と云う芝居を見た事がある。須磨子のカチュウシャもよかった。あれからもう大分時がたっている。この男も四十近い年だ。「役者には、やっぱり役者のお上さんがいいんですよ。」一人稽古をしている灯に写った男の影を見ていると、やっぱりこのひとも可哀想だと思わずにはいられない。紫色のシェードの下に、台本をくっている男の横顔が、絞って行くように、私の目から遠くに去ってしまう。
「旅興行に出ると、俺はあいつと同じ宿をとった、あいつの鞄も持ってやったっけ……でもあいつは俺の目を盗んでは、寝巻のままよその男の宿へ忍んで行っていた。」
「俺はあの女を泣かせる事に興味を覚えていた。