Japanische Klassiker mit Furigana
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いちのくらさわなんりょう
新編 風雪のビヴァーク
松濤 明
Lesen Sie 新編 風雪のビヴァーク (いちのくらさわなんりょう) von 松濤 明 (まつなみあきら) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.081 Zeichen · 51 Bildschirme
もう零時半、今日のうちにこれが越えられるだろうか。越えてしまいたい。越えてしまえばもう恐れるものはないのだから。焦る心をおさえて、これからのアルバイトの準備にコッフェルで雪を溶かして充分に腹ごしらえをした。二時十五分、いよいよ上りに取りかかる。ひどい潜り方なので、少し行って輪かんをつけた。このところ、しばらく免れていたラッセル・アルバイトが再び始まった。時間はぐんぐん経ってゆくのに、足は一向に進まない。見上げる聖の腹にはツェルトをかぶれそうな場所が見当らない。あの風が猛威を逞しうしているであろう頂上などでは、とても寝る気はしない。出発したからにはもはや乗り越えるばかりだ。気ばかり妙にいらいらする。しかし、軟雪地帯は思ったほど長くはなかった。小さなコルに出ると、やがてコチコチのクラストの斜面になり輪かんを外すことができた。もうこちらの天下だ。アイゼンを痛快に利かせて一気に頂上まで登り切った。
おお、赤石、今まで遮られていた未知の世界がとつぜん視野に飛び込んできた。望んでいる最後のもの、それが今はもう目の前に置かれている。「もうあれを越えればいい」、前途の見通しがはっきりつくと、しみじみとした嬉しさがこみ上げてくる。