Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゃくしょこくばなし
新釈諸国噺
Lesen Sie 新釈諸国噺 (しんしゃくしょこくばなし) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.562 Zeichen · 179 Bildschirme
川を眺めてせせら笑い、
「なんだ、これがあの有名な大井川か。淀川の半分も無いじゃないか。国元の猪名川よりも武庫川よりも小さいじゃないか。のう、蛸。これしきの川が渡れぬなんて、式部も耄碌したようだ。」
「いかにも、」と蛸は神崎親子を横目で見てにやりと笑い、「私などは国元の猪名川を幼少の頃より毎日のように馬で渡ってなれて居りますので、こんな小さい川が、たといどんなに水を増してもおそろしいとは思いませぬが、しかし、生れつき水癲癇と申して、どのように弓馬の武芸に達していても、この水を見るとおそろしくぶるぶる震えるという奇病があって、しかもこれは親から子へ遺伝するものだそうで。」
若殿は笑って、
「奇妙な病気もあるものだ。まさか式部は、その水癲癇とやらいう病気でもあるまいが、どうだ、蛸め、われら二人抜け駈けてこの濁流に駒をすすめ、かの宇治川先陣、佐々木と梶原の如く、相競って共に向う岸に渡って見せたら、臆病の式部はじめ供の者たちも仕方なく後からついて来るだろう。なんとしてもきょうのうちに、この大井川を渡って島田の宿に着かなければ、西国武士の名折れだぞ。蛸め、つづけ。