Japanische Klassiker mit Furigana
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たびのたびのたび
旅の旅の旅
正岡 子規
Lesen Sie 旅の旅の旅 (たびのたびのたび) von 正岡 子規 (まさおかしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.120 Zeichen · 10 Bildschirme
半ばおろしたる蔀の上より覗けば四、五人の男女炉を囲みて余念なく玉蜀黍の実をもぎいしが夫婦と思しき二人互にささやきあいたる後こなたに向いて旅の人はいり給え一夜のお宿はかし申すべけれども参らすべきものとてはなしという。そは覚期の前なり。喰い残りの麦飯なりとも一椀を恵み給わばうれしかるべしとて肩の荷物を卸せば十二、三の小娘来りて洗足を参らすべきまでもなし。この風呂に入り給えと勧められてそのまま湯あみすれば小娘はかいがいしく玉蜀黍の殻を抱え来りて風呂にくべなどするさまひなびたるものから中々におかし。
唐きびのからでたく湯や山の宿
奥の一間に請ぜられすすびたる行燈の陰に餉したため終れば板のごとき蒲団を敷きたり。労れたるままに臥しまろびて足をひねりなどするに身動きにつれてぎしぎしと床のゆるぎたる心もとなき心地す。店の方には男の声にて兄さんは寐たりやと問う。この家に若き男もあらざれば兄さんとはわれの事なるべし。小娘の声にて阿唯といらえしたる後は何の話もなくただ玉蜀黍をむく音のみはらはらと響きたり。
鼻たれの兄と呼ばるゝ夜寒かな
ふと眼を開けば夜はいつしか障子の破れに明けて渋柿の一つ二つ残りたる梢に白雲の往き来する様など見え渡りて夜着の透間に冬も来にけんと思わる。