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Japanische Klassiker mit Furigana

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たびやくしゃのつまより

旅役者の妻より

矢田 津世子

Lesen Sie 旅役者の妻より (たびやくしゃのつまより) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

お言葉。先方様から加様に仰言って頂く御親切は始めてのこととて、良人も手を合せんばかりの嬉しがりよう。早速親子三人お邸へ入りこんだのでございます。娘時代にしこまれたお針が今ここで役立とうとは思いもかけず、わたくしも精を出し、良人が快りきるまでは、と寝かせておいて下さる奥様のお心づかいに二倍の元気を出して働きつづけました。お邸にはちゃんとお医者も抱えてあり、三度三度の食事も勿体ない様にて、おかしい程に親子のものが肥ってまいりました。

殊に鶴江はめきめきと丈夫になり、病後の事とて食慾が激しく、奥様はみんなにかくして、よく袂へ菓子などしのばせておいでになり、鶴ちゃん鶴ちゃん、と可愛がって下さるのですが下賤の子の礼儀もわきまえず、ありがと、のひと言もいわずに、ひったくるようにしてむしゃつく哀しさ、身のせつなさお察し下され度候。

お邸に慣れるにつれ、内々の事どもを見ききするようになりましたが、この世の仕合せと羨やんで居りました大家の奥にも暗いかげがあり、奥様には子供さんがなく、お妾に四人もの子があってお袋様は孫の愛にひかされてお妾にかたうどする有様、御主人はまた滅多に家には居ず、たまに帰っても仕事にかまけて奥様とは口もききなさらず、奥様はまったくの独りぼっちなのでございます。