Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「今日はあいにくいないけれども、そのボーイが、きっとなると、安南入を指差して、これは東洋人だが、われわれの同胞だ。君ら出て行ってくれッと、その大男に大見得切ったですよ。」

「その男どうしました。」

と矢代は乗り出すようにして訊ねた。

「その男は黙って出て行きましたが、しかし、一時は日本人が皆殺気立ちましたね。」

「安南人はどうしました。」とまた矢代は興奮して訊ねた。

「安南人はおとなしく黙っていましたよ。」

一同はしんと静まったまましばらく誰も物を云うものがなかった。

「馬鹿な奴がいると、戦争が起る筈だな。」

矢代はいまいましそうに云った。そして、突然久慈に向って、

「君、まだ君は、ヨーロッパ主義か。」

「うむ。」

と久慈は重重しく頷いた。矢代は青ざめたままどしんと背を皮につけて静まると涙が両眼からこぼれ落ちた。

夜の十一時になると、塩野たちは、これから活動を見に行くのだからと云ってカフェーを出て行った。矢代たちもトウリオンフを出てサンゼリゼを下へ下った。

硝子の鯉の塊った口から立ち昇っている噴水は、瓦斯灯の青い照明に煌き爆けた花火かと見える。その噴水から散る霧は一町四方に拡がり渡り、微風に方向を変えつつマロニエの花開いた白い森を濡らしていた。