Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
あたし、お蔭でサロン用の、これで三つもサントノレで造りましたの。」
「一度僕にもたまには着て見せてくれないかなア。」
と矢代はサロンに出ている千鶴子の様子を想像して笑った。
「ほんとに見ていただきたいわ。そのうち、一度オペラへ行きましょうよ。ね。」
と千鶴子は明るい顔で矢代を見上げた。
「それや、賛成だな。」と矢代も愉快そうに空を見て云った。
ルクサンブールの公園の、ある繁みの下にある鉄のベンチは、矢代と千鶴子の休息の場所になって来た。矢代は自分の仕事の歴史の著述を一つするためにも、もうそろそろ皆から別れて一人ドイツへ旅立たねばならぬと思っていた。またもう一度パリへ戻って来るとはいえ、そのときには千鶴子はここにいるかどうかも分らなかったが、まだ二人は別れ難ない友情にまでどちらも深まってはいなかった。ただ季節は五月で、一本の樹の花を眺めてさえ心に火の点くような美しさを感じるのに、それが街街の通りや公園に咲きあふれているマロニエの花の眺めである。矢代もこのうっとりとする旅の景色を一人で眺め暮すよりも、二人で眺め楽しみたいと思った。
しかし、この五月の一番見事な季節になってから、パリの街街には左翼の波の色彩もだんだん色濃く揺れ始めて来た。