Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」
二人は笑いながら長椅子にかけて向い合った。
「でも、この街もあたし、不思議なところだと思いましたわ。」
「そうだ、ここも恐ろしいところだな。何しろ、見ると悪いぞのつづきだから。」
窓から見える所だけでも、犀の肌のような樹のない石の高山の頂から、街の上まで氷河が流れ降りていた。三方から垂れ流れたその氷河の狭い底辺に、森閑として建っている大都会がこの街であった。一条の塵も落さぬ清潔さでサフランの花の満ちた牧場に包まれたこの街は、最上の彫刻を見ているような深く冷たい襞を貯えて静まっていた。
「もう夕暮だからいいけれども、お昼にあの山を見ていると恐くなって慄えて来るようよ。あたし、こんな所に一人でなら一日もいられないわ。」
矢代は山を見ていると、永久に腐らぬ悲しみというようなものが満ちて来て、久し振り千鶴子に逢った感動も岩の冷たさに吸いとられていくのを感じた。それは冷厳無比な智力に肌をひっ附けているような、抵抗し難い命数に刻刻迫られる思いに似ていた。
「これはミッテンワルドより一層たまらないな。しかし、明日は一つ、あの山の上へ登ってやろう。」
矢代はこう云って山に背を向けてから久慈や東野のその後の動静を訊ねるのだった。