Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「ここはまだ船の中でございますが、明日は皆さま、パリへお立ちになる方が多うございますから。」

千鶴子がここまで云ったとき三島がまた、

「パリの屋根の下。」

と叫んだ。もう子供と同じようになっている皆の者は手を打って喜んだ。千鶴子は真紀子に一寸会釈をしてからパリの屋根の下を唄い出した。

かんてぃるゆうぶぁんたん

さびぃえいゆままん

るぃでぃったんじゅうるたん

どるまん

だんのうとるろっじゅまん

じぇべいねすうばぁん

ぷうるてるべいるふぁれどら

るじゃん

唄がすすむままに一同はもう上機嫌になって、間もなく眼の前に現れて来るパリの実物に接した思いで、それぞれ首を振り振り唄うのであった。この唄は一度終るともう一度もう一度と、皆は千鶴子をせきたててやめなかった。

今日はいよいよマルセーユへ著くというので船客たちは朝から誰も落ちつきがなかった。食卓のボーイや酒房や部屋つきのボーイにチップをやらねばならぬ。客たちはあちらこちらに塊って幾らやるべきかという相談をしていた。誰か一人の者が巨額のチップを与えれば他の者が不愉快になる。長らく共同の生活をしたのであるから、均衡を乱しては船中の愉快さも最後の一日で消えてしまう。