Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

もうその日の宿をとったからは二人は安心だった。一本の樹木もない峡間に拡がった牧場の見える路へ出て、そこで食べ残りのサンドウィッチを食べ始めた。

「今日は良いお天気だったから、きっとお星さんが降るようよ。ほんとに来て良いことをしましたわ。何んてあたしは幸福なんでしょう。胸がどきどきして来てよ。」

千鶴子は髪をかき上げながら周囲の山山を見廻した。矢代は黙ったまま、サフランの花の中で寝てみたり起きてみたりした。氷河は左方の斜面にねじ曲ったおおどかな流れの胴を見せていた。矢代は幾らか疲れが出て来た。手枕のまま頬に冷たく触れて来るサフランの花の匂いを嗅いでいると、温度が急に下り始めたらしく首筋がぞくぞくとして来た。

「まだかな、羊。」

こう云って彼は花をむしり取っては弁を唇で一つずつ放していった。

「もうすぐでしょう。きっと来てよ。」

千鶴子も待ちくたびれたものか矢代に添って一寸仰向きになりかかったが、直ぐまた起き直った。

「ここから見ると、やはり日本は世界の果てだな。」

と矢代はふと歎息をもらして云った。

「そうね、一番果てのようだわ。」

「あの果ての小さな所で音無しくじっと坐らせられて、西を向いてよと云われれば、いつまでも西を向いてるのだ。