Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
もうこんな物なんかいらんッ、と呶鳴ったんですって。何んかそれで皆さん大笑いしてらしたことあってよ。」
「今日もこれでだいぶ書類を叩きつけた者がいるだろうな。」
と久慈は云って、自分も確に周章者のその一人だったとひそかに苦笑をもらすのだった。すると、戦争が起ったということなど全く嘘のようにまた彼は落ちつけた。
ボーイがテラスへ来たので千鶴子はショコラを註文した。二十年前に藤村が毎日ここへ来ていたというので千鶴子はこのリラが好きだった。ここのカフェーはどこよりもボーイの廻りがのろくさとして遅かったが、それが一つはむかしの全盛をしのぶよすがとなり旅人にのどかな気持ちを与えた。海老茶色の革で室内をめぐらせてあるソファーもすでに弾力がゆるんでいたが、それでもまだ質の良い革やバネは、べこべこの日本のカフェーのものとは比較にならなかった。来ている客も老人が多くコーヒーに入れた砂糖の溶ける音までよく聞えた。しかし、何んと云ってもここはもう衰えるばかりだった。
「文明は西へ西へと行くという学説があるけれども、もう文明は大西洋を渡ったのかもしれないね。あるいは今ごろはアメリカを通り越して、太平洋の真ん中でうろついている最中かもしれないぞ。